≪記事全文≫ 技能労働者の社会保険未加入対策で鍵を握る法定福利費の確保で、元請企業が下請企業に対し、見積書に別途計上された法定福利費の支払いを認める動きが出始めた。国土交通省直轄工事の元請企業に対し、法定福利費を内訳明示した標準見積書を提出した専門工事業者が満額支払いの同意を得た。各専門職種の下請企業から元請企業に標準見積書を提出する活動が一斉に始まる9月を前にこうした実例が出てきたことで、対策推進に弾みがつきそうだ。
国交省が業界団体や関係行政機関などとつくる社会保険未加入対策推進協議会は、各専門工事業団体の特性を踏まえた標準見積書をつくり、保険加入に必要な経費の内訳を示して支払いを求めることにしている。現在、各団体の標準見積書の作成作業が大詰めを迎えており、9月の一斉提出スタートに向けて準備が進んでいる。
そうした中で法定福利費支払いの実例として出てきたのが、国交省関東地方整備局発注の「圏央道成田下総線跨道橋部その他工事」(千葉県成田市)。全国基礎工業協同組合連合会(全基連、梅田巖会長)傘下の丸泰土木(東京都江戸川区、玉川文明社長)が橋梁下部工の基礎工事を元請の市原組(千葉市美浜区、松山淳一社長)から下請受注。社会保険加入費として計上される法定福利費の内訳を明示した標準見積書を提出し、その満額が支払われることになった。
6月に下請契約を交わす1カ月ほど前に丸泰土木は、市原組に提出した標準見積書の中で直接工事費や諸経費とは別に法定福利費を計上。健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険などの率と人工数から算出した必要な費用を提示した。その結果、「消費税などと同様に法的に定められた経費として支払うとの快諾を得た」(営業部)としている。同社は、今回の案件以外にも十数件の工事で既に標準見積書を提出したという。
4月から傘下企業による標準見積書の提出をスタートさせた全基連では、丸泰土木以外にも法定福利費の別枠計上を認められた事例が2件ほど出ていることを明らかにしている。
国交省は、「社会保険未加入対策を進める上では、標準見積書を活用した法定福利費の確保が大きな鍵を握る。全基連傘下の企業で活用事例が出始めてきたことが、9月の一斉スタートに向けて大きく弾みがつくと思う」(労働資材対策室)と期待を寄せている。
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